その男、カドクラ ケンイチ






「…やっと…二人きりになれたね…」



後ろで自転車をこいでいた人間がアカイに並んだと同時に声をかけた。




頭で考える前に体が反応する。




“やばい”





アカイは全速力で自転車をこぐ。






「何で逃げるのせっかくあの教師がいないんだよ
ねぇ何で逃げるの」



男は追いかける。



姿なきストーカーがついに目の前に現れた。



アカイは泣きそうになりながら逃げる。








“先生、助けて…”





心の中で叫び続ける。






「ぼくはもう我慢できない二人で遠くに逃げよう」


すぐに追いつかれた。








“もうすぐ家だ
でももうやばい“





アカイはとっさにハンドルを左に切る。


突然の動きにストーカーはついていけずブレーキをかける。


道を1本ずらして振り切ろうとする。












末丸公園が見えた。


通り抜ければ大通りに出る。



アカイの目から涙が溢れ出る。


泣きながらとにかく自転車をこいだ。
















バンッ



公園に入りかかったと同時にバランスが崩れる。


追いついたストーカーがアカイの自転車に蹴りを入れた。


バランスを崩したアカイは自転車から放り出される。


「何で逃げるの
ほら、怪我しちゃったよ」


「痛っ……」


その場にしゃがみ込むアカイ。



男は自転車から降りるとゆっくりと近づく。




「もう逃げないでよ。
せっかく君に写真を送ったのに何で教師なんかにあげるの。
僕とひとつになろうショウコ。」


男はぶつぶつと呟きながらアカイに手をのばす。



「いやーーー!!」




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