その男、カドクラ ケンイチ






ガラガラ


職員室の扉が開いた。


「タ、タケダ先生!」


カドクラの目に飛び込んできたのは私服姿のタケダだった。




「タケダさんなにやっとるんですか。」


エンドーも目を丸くする。




「教頭先生から連絡をもらった。」


タケダはカドクラの前に立つ。



「よくやったカドクラ君。」


「あ、いえ。」




「カドクラ先生。
アカイさんの心配をしていたのはカドクラ先生だけじゃないんですよ。」


教頭が微笑む。






「あれタケダさん。
せっかく来たのに差し入れは?」


ちょっと良い雰囲気になったのにエンドーが意地汚い質問をして壊れる。


「ないわ!」









タケダはあまり多くを語らなかったが、カドクラは安心した。


信頼できる人間が1人増えたことに。









「じゃあそろそろ帰りましょうか。」


教頭が提案する。



「タケダさん、俺とカドクラ家まで送ってって下さいよ。」


「ああいいよ。」








「あの!」


カドクラがちょっと大きめの声を出す。



「な、なんだよ。」


他の3人の動きが止まる。



「ずっ~と考えてたんですよ。
アカイとダテが末丸公園にいた日。タケダ先生が見回りしてた時です。

なんであの若者が学校に電話してきたか。」



カドクラは話を続ける。



「ひょっとして止めてほしかったんじゃないのかなって。

間違ってることをしてるってどこかで気づいてるのに抑えられない自分を。

だから学校に電話したのかなぁって。

マッグにアカイとダテが一緒に行ってたんなら、ダテの名前を知る機会もきっとあっただろうし。」






「相手の立場になって考えてみる。いいことですよカドクラ先生。」




教頭は日々教師として成長するカドクラを見てまた微笑んだ。








第14章 完

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