キッチン・シェア〜びっくりするほど気づいてくれない!〜
さおりが自宅で、丁寧に作り上げた夕食を味わっている頃、寒川は心ここに在らずといった顔で街をうろついていた。

打ちのめされるような気分にはならない。しかし、なんとも言えない脱力感で、家に帰ってもナメクジのように寝続けそうだと思ったから、なんとなくふらふらしている。夕食も食べる気にならない。その辺の居酒屋でヤケ酒などというのも、何となくやりたくなかった。

最終的に、寒川は近所の小さなスーパーで冷凍食品のパスタを買い、自宅へと帰った。

(ああ、また、楠木さんか……コンソメのにおいと、何か香ばしかて濃厚なにおいがする……)

___楠木さんの料理、食べたい。

寒川はぽつりと口にしていた。
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