キッチン・シェア〜びっくりするほど気づいてくれない!〜
「寒川くん。しょうが焼き食べられる?」

寒川はさおりの問いに、さおりの言おうとしていることを察した。

もしかして、さおりは自分に手料理を振る舞おうとしているのではないか。

それはさすがに期待し過ぎというか、都合のいい想像だろうか?

実は入社当時から寒川は、さおりのことを「かわいい先輩だな」と思っていた。入社してすぐ同期の女子社員に猛アタックされ、なんとなく付き合ってしまったからそれきりだったが。このシチュエーションは神様からのご褒美としか思えない。

にやけてしまわないよう口の端に力を込めながら寒川は答えた。

「やーもう大好物です!」

さおりはパンっと手を叩いて喜んだ。

「よかった! じゃあ寒川くんへの歓迎の気持ちを込めて今から作るから、食べていきなよ!!」

「ほんとですか!ありがとうございます! 俺、あがっていいんですか?」

「あー、ちょっと片付けるから5分だけちょうだい、ごめんね」

「じゃあ俺、その間にちょっと家族に電話してきます」

……すげえ、まじでこんなことあるんだ。

寒川は満面の笑みで自分の部屋へ戻った。
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