キッチン・シェア〜びっくりするほど気づいてくれない!〜
さおりは部屋を整頓して、軽くごみを拾った。昼間掃除機をかけておいたからそれほど神経質になる必要もないだろう。
再び手を洗い、冷蔵庫から食材を取り出す。
豚肉は、昼のうちに生姜焼きのタレに漬けておいた。しかし、2人ぶんになるため追加で漬けなければならない。
出来るだけ長く漬けたい。柔らかい生姜焼きの条件だ。まず、豚肉を仕込んでしまおう。
再びインターホンが鳴り、寒川がやってきた。
「どうぞくつろいでいてください。30分で作るので」
「や、悪いっすよ。俺も手伝わせてください」
さおりはブンブンと首を振る。
「引越しで疲れたでしょう? それに1人部屋の台所というものは狭いのですよ……寒川くんの入るスペースはないから、どうぞあちらでお待ちください! あ、『月刊軟体動物』の最新刊あるからぜひ読んで!」
「は、はあ……すいません」
寒川は少しドキドキしながら、部屋へ足を踏み入れた。
「……めっちゃ綺麗ですね」