キッチン・シェア〜びっくりするほど気づいてくれない!〜
寒川は目を見張った。

正直、さおりのことは「顔は可愛いが不思議ちゃんな人」だと思っていた。

さおりの部屋は入るまで想像がつかなかった。妙な置物だったり、怪しげな香りのお香だったりに迎えられるかもしれない、とも思っていたが。

目に入ってきたのは、インテリア雑誌に載せられそうな程、整えられ、知性を感じさせる室内だった。


カーテンやカーペット、ベッドカバーがグリーン系で統一されていて目に優しい。

背の高い本棚には、上から下までびっちりと本が詰まっている。読書家なのだろう。何カ国語かの辞書、洋書が目立つ。

部屋の中央には、一輪挿しが置かれた丸テーブル。

壁際の机の上の色鮮やかなトルコランプも印象的だ。

「何か言った?」

「あ、いや、綺麗な部屋だなって……」

「え、そう? まあ 色々隠してるからね」

キッチンから生姜をすりおろす音が聞こえる。

寒川は結局料理が出来上がるまで、ぼうっと部屋を眺め回していた。
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