サイレント・タロット
「……そう、ありがとう。そこまで褒められたの、初めてだわ」

どきどきする胸をおさえつけながら、うつむいて言う。感情の整理が間に合わず、目が合わせられなかった。

そのとき風がざあっと吹いて、譜面台の上の楽譜をかっさらっていった。

「あ……!!」

勢いよく待った2枚の楽譜は、追いかける隙も与えず、池の上を滑空し、ぱちゃんと水面に落下した。

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