【完】聖剣伝説~愛を紡ぎ出すもの~
「ウーゴ!エステル!クロエは何処?!」


焦れる心をなんとか押さえ込んで、彼女は従事である3人へと果敢に声を張った。


そうでもしないと、何かに心の裾を掴まれ、そこから自分では分からない場所へと連れて行かれそうだと思ったから。


「イザベルさまぁー……!」



半ば悲鳴にも似た声で、遠くの方からクロエ達が自分を探している。


イザベルは、何がなんだか分からず、混乱する頭を抱えながら庭に飛び出してく。
それが危険なことだと知りつつも。


そこで、自分の身に纏うねっとりとした風を体内に取り込んだ。



そして、息を飲む。
夜だから、だけではない…闇の気配。
まるで影そのものが、うごめいているようで、気味が悪かった。





何かが、間違っている…。
イザベラは、そう直感した。
此処は、本来自分のいる場所では、ない。



何時の間にか自分が、紛れ込んだのか。
それとも、自分の意識の中に、何かが忍び込んできたのか…。



惑わされてはいけない。



イザベルは、スッと口元に右手をやり、これ以上直接淀んだ空気を吸わないようにした。



「どうなっているの…?」



一人呟いても、謎は深まるばかり。

何をどうしていいか分からない。
イザベラは心細さから、きゅうっと水色のドレスの生地を握り締める。



そうして、暫く立ち竦んでいると、不意に後ろから声を掛けられた。

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