【完】聖剣伝説~愛を紡ぎ出すもの~
出逢い
風が、吹く。
するすると、黒い霧のようなものを抱いて。
何か不吉な不安をまといながら…。
「おかしいわ…星が見えない…。月の欠片さえも…」
アザクシュベル王国の王女であるイザベラは水鏡を覗き込んで、そう呟いた。
何も映すことのない、ただの水瓶と化したそれ。
イザベラの水鏡は、しんっとして動かず、いくらイザベラが手をやっても、動く事をしない。
それでもイザベラは、何度も水鏡に手の平をかざし、今この世界で起こっている事をその水面に映し出そうと試みた。
そして、暫くそうした後、諦めて窓から探るようにして星の跡を辿る。
さわさわと、生温い風が身に纏わり付いていく。
どうしようもない胸騒ぎが増していく。
探してみてもいくら辿ってみても、何も見つける事が出来ない。