【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…
その足で、センセのお兄さんの家に向かう。
部外者の私は何にも口を出さずただそっとその場にいる。
「僕は祐也が羨ましかったよ」
「そんなはず…ないだろ」
「ううん。父さんも母さんも祐也のことを大事に思ってた」
「俺はあんなにアニキと比べられてダメだダメだって言われてたんだぞ?」
「きっと2人なりに祐也を鼓舞してたんだと思うよ。
僕にはそんな言葉、何一つかけてくれなかったしね」
「じゃあ俺は…」
「祐也は祐也らしくいればいいの。
僕のことなんか気にしないで自分の足で歩いて行けばいいんだ」
なんだかこのお兄さんはセンセのこと大好きなんだろうなって思った。
センセはちゃんと愛されてるよ。
「何か…馬鹿みたいだな、俺の人生。アニキに張り合ってばっかで」
「祐也は…もっと頼ってくれてもいいんだよ」
「ありがとう…」
スッキリしたような、吹っ切れたような表情に見える。
来て…良かったね、センセ。