【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…
「あはは~それでね」
「もぅ、やだぁ~」
横を過ぎ去るカップルを見て思う。
「ちゃんとした返事を聞くまで、それまではセンセの隣にいますね」
「…そうしてくれ」
「早く…桜が咲くといいですね」
寂しい、枝だけの桜の木を眺めて言う。
私の手はいつまでも冷たいままだ。
早く私にも、春が来てほしい。
この手が暖かくなるように…
センセの手の温もりを感じて。
「いつのまにか変わっているんだろうな。
季節も景色も…人の気持ちも」
「変わらない思いもありますけどね」
「例えば?」
「内緒です」
例えば。センセへの"好き"の気持ちだよ。
「俺は現在進行形で変わっている思いがあるよ」
「え、何ですか?」
「…内緒だよ」
ぶわっと風が巻き起こり、ふと桜の匂いがした。
「何でそんなこぼすの!?」
「思ったより不味かったから…」
「だから桜味なんてやめればよかったのに…」
「もうすぐ咲くから、味を知ってみようと思って…」
桜が満開になる頃、もう1度ここに来たいな。センセと一緒に。
「桜が咲いたら来ようか」
「…え?」
思っていたことを言われてただビックリする。
「…はい!」