【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…
「今日は和歌の勉強をします。
百人一首の40番。中学校でも習ったかもしれませんが…
和歌は古文を読む上で大事だと思うので」
先生は古典の先生。
先生を好きになったおかげで古典も好きになった。
「えぇー…
和歌って意味不明だよね、昔の人と価値観違いすぎるし」
それでも和歌は別格によくわからない。
…面白さがわからない。
本当に価値観が違いすぎて良さがわからない。
「そう…ですね。
でもだんだんわかるようになってきますよ」
そう言って黒板に書かれる和歌。
"しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで"
「これは歌を競う場で詠まれた歌です。
訳としては、
私の恋の気持ちを誰にも知られないようにじっと包み隠してきたが、とうとう顔色に出てしまったようだ。恋に悩んでいるのかと人が尋ねるほどに。
隠せなくなるほど想いが大きくなってしまった…そんな恋心が詠まれてますね」
「あたし絶対隠せないなー」
クラスの子が笑いながらそう言う。
─私はどこか自分のことのように思いながら先生の授業を聞いていた。