【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…
『それでも夏未が言ってくれたことが嬉しくて、僕の気持ちもちゃんと伝えようと…そう思います。
しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
この和歌を授業でやったこと、覚えてますか?
あの時、夏未のことを思っていました。もし僕たちの関係を言ったらどうなるだろう、と。
祝福してもらえる?それとも別れさせられる?
僕は後者だと思いました。そして夏未の未来も壊しかねない、そう思いました。だから何もできなかった。
でも、母には気付かれてしまっていたようです。夏未のこと、素敵なお嬢さんねって僕たちのことを喜んでくれました。
…こんなことなら、もっと夏未の傍にいれば良かった。
誰かに知られることを恐れて、何一つ彼氏らしいことができなかった…それだけが心残りで後悔していることです。
寝ても覚めても夏未のことを考えていて、もちろん今も夏未を思いながらこの手紙を書いています。
こんな情けない彼氏でごめんね。ずっとずっと好きです。夏未の幸せを願っています。
だから僕のことは忘れて、前を向いて未来に歩んでいってね。
飯島 蒼汰』
…何で、どうしてそんなこと言うの。
後悔だなんて。
今生の別れみたいなこと言わないでよ。
これからすればいいんじゃないの…?
なのに、何でそんな悲しいこと言うの?