【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…


気付けば手紙を握りしめたまま教室を飛び出して、先生が入院している病院の前まで来ていた。



忘れるなんてできるわけないよ…!


私の中で先生はいつの間にか大きな存在になってるんだよ、どうしてわかってくれないの!


それにもう私に会えないかもなんて…


一体どういうことなの…?




先生の病室は…





「……え?」





鼻をすする先生のお母さんと、ベッドに横たわる先生。





「…先生…?」





声をかけてもピクリとも動かない。





「…夏未ちゃん?!」





泣き腫らした顔のお母さんが私に抱きつく。





「もうちょっと前だったら蒼汰は、蒼汰は…!」





お母さんの手がどんどん強くなって、息苦しく感じるものの、私の視線は穏やかに眠る先生の顔を捉えて離さなかった。

< 62 / 127 >

この作品をシェア

pagetop