【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…
「桜織…」
「ん?
…あっ!」
美月が1冊のノートを持って私の方を見てくる。
それ…私の漫画を描いてるノート!
見られてしまった…
仲がいいとはいえ恥ずかしい。引かれたらどうしよう…
「これ桜織が描いたんだよね?」
「えっと…うん」
「すごいよ!!」
急に輝く目で見つめられると…それはそれで恥ずかしい!
「モデルとかいるの?
すごいキュンキュンした!」
「あーー…」
私と先生です、とは言えない。
「ううん、いないよ」
嘘をつくことに多少の罪悪感がありながら、そう言って笑う。
「何かに応募したらいいのに…」
「応募?」
「漫画家の!たまにやってるじゃん?」
「そんなの絶対無理だよ」
何万もの応募の内、夢を掴めるのはごく僅か。
私がその中に入るなんて考えられない。
「でもさ、応募するだけしてみたら?
受からなくても損するわけじゃないし」
「…そうかもね」
こんな中途半端な気持ちで応募してもいいのか…っていう気持ちもあったけど美月が言うのも一理ある。
「応募…してみようかな」
ただ妄想を描いてただけなのに、それがこんなところまで来るなんて思いもしなかった。