ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい
「ふん! 本当に小物しか居らんな。こんなレベルではシルベスターは侵略出来ぬぞ?」
そう言いながら、大太刀一線で敵の一個小隊の半分を再起不能にしている。
それを、息も切らせず余裕の表情で行う巨躯の男。
敵陣には背筋に冷や汗流れる展開だ。
そうなるように事を運んでいるのはシルベスター魔法騎士団副団長で、第一王女の夫でもあるイソルガである。
彼は叩き上げの魔法騎士で、その昔入隊したてのアマンダを鍛えた頃からのお付き合いである。
実は、アマンダの猛プッシュに負けた御仁だ。
彼は独り身で行く予定だったのだが、アマンダの猛プッシュとその流れから接していく内にアマンダこそが自分の連れ合いであると感じてそれ以後、今ではアマンダを猛烈に溺愛している。
アマンダの産休中は騎士団長代理も務めるベテラン魔法騎士で、王族のアマンダと張るほどの魔力量とその調節能力の良さに、一目置かれる騎士である。
守る人を得た現在のイソルガは、もはや昔以上に無敵である。
残り半数をどうするか悩んでいる所に、物凄い風圧と大きな影が降ってきたので慌てて避ける。
そこにドーンと着地したのはラグーンの竜騎士団長、ガルドウィンと相棒の黒竜セイダーである。
やはり、戦場でその姿を見ると大きさや強さは桁違いだとイソルガは再認識する。