ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい

『なにか、ものすごい勢いで後方から来るぞ?』

セイダーが呟くのとほとんど同じくして、魔法で飛んでいるであろう少女が後方から竜に向かって飛んでいくのを目の端で捉えた。
魔法師のローブを羽織った少女など、この近辺には早々いるものではないはずの姿に少し目を見張るが少女に敵意は全くないのでそのまま見守ることにしたガルドウィン。
しかし、その直後今まで見たことのない魔法騎士団団長と副団長の姿を目にしてしまいそちらの方が衝撃が強かった。

「セ、セリ!! あなた、なんで前線に来ているの!?」

たった一人の少女の行動に、慌てふためく魔法騎士団団長アマリアの姿は今まで一緒に魔獣討伐や合同訓練でも見たことなどない。
いつでも悠然と、魔法と剣を合わせて戦う希代の女性騎士団長がものすごく慌てている。
その横で、冷や汗を流している副団長も見たことのない表情を浮かべているのだ。
この最強とも言えよう組み合わせの夫妻を慌てふためかせる少女は一体なんなのか。

少し、興味がわいたガルドウィンは少女の行動をそのまま見守ることにした。
なにしろ、彼女には敵意がなく見るからにその行動は自国で初めて竜を見る子どものそれと同じだったからだ。

飛んで行った少女はセイダーの側に着地すると、寝そべっていても大きい竜を見上げてわくわくと好奇心を隠せない目を向けている。
どうやら、少女は竜に触れてみたい様子だがいきなり触れても大丈夫か様子を見ているのが分かる。

ガルドウィンはさっと、慌てたままの騎士団長夫妻を置いてセイダーの前で好奇心と戦っている少女に声を掛けに行った。
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