ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい
「初めまして。竜を見るのは初めてですか？」

私が竜の目の前で、眺めて触れても良いものか葛藤していた時後ろから声を掛けられた。
振り向くと、イソルガ義兄さんよりは細身ながら背の高い蒼い髪の綺麗な男の人がいた。
雰囲気は長兄に近いその人は私の隣に並ぶと、目の前の黒い竜に話しかける。

「セイダー、こちらのお嬢さんがお前に興味があるみたいだ。触れさせても良いだろう？」

声を掛けられた黒い竜は首を動かし、こちらに顔を向けた。
その瞳は、意思と知性を持つと分かるものでこちらを見て少し細められた目で、私は観察されているのを感じた。

『かの有名な魔法師のお嬢さんではないかな？　我が気になるという意識はここの上空を飛んだ時点で感じていた。怖がらないお嬢さんは貴重だな。良いとも』

「あぁ、このお嬢さんがシルベスターの末姫。癒しの姫なのか」

どうやら、この騎士さんはこの黒い竜と会話しているらしい。
お互いに表情はにこやかだ。

「すみません。末の姫様とは気づかず、ご挨拶が遅れました。ラグーン帝国竜騎士団、団長のガルドウィンと申します」

丁寧な騎士の礼で、挨拶をすると少女は慌てたように淑女の礼で返してくれた。

「こちらこそ、唐突に申し訳ありません。私、シルベスター魔法師団第二隊隊長のセリです。
セリ・シルベスター。シルベスターの第二王女です」

この、美しく可愛らしい美少女がどうやら巷で噂の癒しの姫だそうだ。
綺麗な姿勢と、飛んで移動する魔力の高さもその身に纏う防御魔法も一級の魔法だ。
維持する魔力からも、間違いなくこの大陸一の魔力保持者というのが窺える。

「竜、大きくて怖くはなかったんですね。セイダーもセリ様なら大丈夫と言ってますので良かったら触れてみますか？」

挨拶を交わしてなお、セリ様の視線はセイダーに向いていたので彼の了解も得ていた俺は提案した。
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