ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい

すると、セリ様は輝かんばかりに表情を変えセイダーに近づき声をかけた。

「ガルドウィン様が触れてもいいと、おっしゃるので失礼しますね？」

可愛い、疑問形での問いかけについ口元が緩む。
和む、可愛らしい少女といかつい竜との触れあいはなんとも言えない光景だ。

「ぐるるぅぅぅ」

セイダーは鳴いて、その手が触れることを促している。
姫は、ゆっくりとその鱗に触れるとまた目を見開き撫で始める。

「すごい、硬いのに温かい。これが竜……」

そんな感想に、まんざらでもなさそうなセイダーの様子。端から見れば、小さな少女と竜の交流は危なそうに見えるが双方満足そうな姿に竜騎士とそばにいる竜はほっこりしていた。

そんな一人と一匹に近寄る竜がもう一体。
白くて竜としては小柄な方だが、それでも大きい。そんな一匹はルカの相棒の風竜エラルダだ。
エラルダはまだ竜としてはやっと大人になったところで１０５歳。
好奇心いっぱいの性格で、ルカとの相性もいい。
そして珍しいことにメスの竜である。
ラグーンにはたくさんの竜がいて、騎士と組むのは大体好戦的で体力もあるオスが多いがルカが見つけた相棒はメスの風竜だったのだ。
しかし、エラルダは飛行スピードが騎士団一のセイダーの次に早く、相棒ルカとの相性も良く所属２年目でありながら団長の伝令役になった。

しかし、若いがゆえに好奇心の部分はまだまだ子どもっぽいのだ。

「ぐーるるぅ？」

セイダーと姫の触れ合いをうらやましくなったらしいエラルダは、自分も撫でて？と言わんばかりにセイダーと姫の間に入っていく。

「ガルドウィン様、この子も撫でても大丈夫ですか？」

その問いには、後方から慌てて駆けつけたルカが答える。

「セリ様、うちのエラルダがすみません。良かったら撫でてやってください。セイダーが羨ましくなってしまったみたいなので」

少し、慌てつつ、申し訳なさそうにいうルカに姫はむしろ嬉しそうに微笑んでエラルダも撫で始めた。