ドラゴンの血を引く騎士は静かに暮らしたい
しかし、ガルドウィンはそれが昔話の物語ではないことを知っている。
それは相棒セイダーのおかげである。
なにしろ彼は長生きの竜である。
生きている間に起きていたことを覚えているわけで、今回の魔の復活は実に五百年ぶりである。
セイダーがまだ大人になり切らない頃に、魔が復活しそのころに魔法に強く竜にも好かれた竜人騎士が魔を倒し封印したという。
しかし、今竜騎士には魔法に強いものはいない。
あの頃の魔法を駆使できるものがいないのだ。
そんな状態で魔が復活。
倒すことが出来たとして、封印できるものがいないのだ……。
考え込んで動かなくなったところに、騎士服の裾をキュッと引っ張られて振り返ると末姫がいた。
「団長さん、困った顔してますね? なにがありました?」
そんな問いかけに、その場に一緒に居たアマリアが声をかける。
「昔話によく出るでしょう? 魔が復活したのだそうよ。ガルドウィン団長はそれを討伐せよと、自国の宰相様に言われたみたいね」
彼女は話を聞くと、少し考えて言った。
「私も一緒に連れて行ってください。たぶん、いまこの世界で魔を封印できるのは私くらいだと思うので」
希代の白魔法の使い手、癒しの姫が封印魔法が使えると?
俺の疑問は顔に出たらしい。
彼女は、少し緊張しつつも話してくれた。
自分の得意魔法は白魔法なのだが、そもそも魔法に関して全属性持ちであること。
なので魔法の幅が本来とてつもなく広いこと、そして魔力量が膨大であること。
その点から見ても、魔の封印には自分が最適であることを説明してくれた。
しかし、彼女はシルベスターの秘蔵の姫である。
戦いの最前線に連れて行くべきか悩んでいると、それを聞いていたアマリアは渋い顔をしている。
「それならヴィーでもいいのではなくって? あの子も無尽蔵の魔力持ちじゃない?」
アマリアは言うが、それにイソルガが反論する。
「封印なんて繊細な魔法はヴィーには不向きだろう」