小さな奇跡。
凛side


「なんかあった?
なんか考え込んでたな?」
そういって隼人くんはニコッと笑った…


「あんまり悩むとそうやって苦しくなるんだぞ!」

「はぃ…すみません…」

「ん?
別に怒ってねーよ?
俺だってはじめの頃はNGだらけ!
すげー怒られてきたし…
でも、そうやって怒られてきたから…だから、今の俺がいる。俺だって初めから完璧だったわけじゃないよ?」

「すみません…
でも…桐山…桐山隼人くんは、初めから素敵な人だった!あたしみたいに…あたしみたいに……こんなに失敗しなかった…完璧だったじゃないですか…。」



言っちゃった…



「へ?
そーやって、思ってくれてたんだ。
嬉しいな?でもテレビで見てる完璧な俺と撮影中の俺なんて全然違うよ?
山田さんが知らないだけで昨日NGいっぱい出したからね?昨日監督に怒鳴られたからね?」




あたし、知らなかった…
隼人くんが努力してきたのは、知ってた。
でも、完璧なんだって思ってた。


「そうなんですか?」

「そーだよ?
山田さん初めてにしては演技上手だと俺は思うな?
山田さんはさ?憧れの人とかいないの?」

「ぇ!?」

やばぃ。これこそピンチだよね?
でもさ?
やっぱりこの世界で生きててさ?憧れてます!とか言われたら、嬉しいんだよね?



これって素直なほうがいいの?
嘘ついた方がいい?




「ホントのこと教えて?」


「えっと……
隼人くん…隼人くんです!」


「ぇ?俺?」


「はい。ごめんなさい……」


「なんで謝るの?
俺なんてまだまだだし、そんな俺のどこに憧れたかわかんないけど。
そうやって…俺の姿見てこの業界に入ってきてくれたの嬉しいよ?
ありがとね?山田さん!」

え?
ウソ?
ありがとうって言われた。


「もしかして…
俺とのセリフに悩んでた?」

「ほぇ?」

やばぃ!変な声でた…

「可愛い
なに?別に撮影なんだしちょっとくらいさ?いいんじゃない?」


見透かされてる…
でも、ホントの理由は、好きだからだし…
気づかれてない!


「あたし…撮影初めてで…
初めてなのに憧れの人との撮影で緊張しちゃって…」


「大丈夫!
じゃぁ、ホントはあまりよくないけど…
午後の撮影俺がリードするから、山田さんちゃんとそれに応えてくれる?それならできるでしょ?」


「はいっ!
がんばります!」



将来の夢大物だとか言ってたのに、
こんなことで悩んでるなんて、馬鹿みたい!って今思った!

今回の撮影をものにしないと!


山田凛!
スイッチ入れ替えます!!




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