愛を乞う
慣れてきた

それから、土日のお休み以外は朝9時から17時まで藤城様宅でお仕事させていただいた。
朝行くと、晩御飯と朝ごはんの片付けに始まり、掃除、洗濯、お買い物と目まぐるしくも充実したお仕事ができている。藤城様以外の方々ともお話できるようになった。
皆さん、強面だけど、優しい。
藤城様は…。無口で、時々睨んでくる。
なんかしたかな?うーん。わからない。
まあ、解雇されないからいいのかな?

そうして、初めてのお給料。
見たこともないお金がある。こんなにいいのかなと思う。
帰りに私と奈緒の分の小さいケーキを買って帰る。
「ただいま。奈緒。今日はお給料日だったから、ケーキ買ってきたよ。」
と言うと奈緒は花が笑うように嬉しそうに笑って
「本当に?嬉しい!ケーキ大好き。」

ああ、もう!本当に可愛いんだから。
「今日はお給料日だから、特別。ケーキ食べるとまた、頑張ろうって思えるよね。」
2人で美味しくいただきました。

お仕事は楽しく、お買い物には誰かが付き合ってくれ、荷物を持ってくれる。
確かに量が多いから、助かるんだけど。
「あの、嬉しいんですが、毎日付き合わせて申し訳なくて。」
と言うと、
「大丈夫っす!雪さんに無理はさせられませんから。荷物も多いですし。雪さんには感謝してるんっす!毎日美味しいご飯作ってくれて、お屋敷も綺麗で。雪さんも綺麗ですし。
それに、社長が…。あっ!なんでもないっす!」
「綺麗じゃないですよ。お世辞が上手ですね。社長?がどうかしましたか?」
「いえ!なんでもないっす!」
と誤魔化された?ま、いっか。

そんなある日、脚立に乗って棚の上にあるものを取ろうとしたら、脚立から足を踏み外した。
落ちる!と思って身構えたら、あれ?落ちたけど、痛くない?
見ると逞しい腕に抱き抱えられていた。
「藤城様!すみません!」
じろっと睨んで
「気をつけろ!高いとこのは若いのにやらせろ!」
と怒鳴られた。
藤城様の腕から解放されたけど、まだ睨んでいる。
「あの、藤城様?」
「その呼び方。なんとかならんのか。」
「なんとお呼びすれば?」
「翔悟だ。」
「いえいえ。雇い主をそんな。」
「いいと言っている!」怒鳴られじろっと睨まれた。
「では、翔悟様。」
「様はいらん!」
「えーと、では、翔悟さん?」
と言うとふんっと鼻をならして
「まあ、いいだろう。」と不敵に笑った。

翔悟さん。って呼ぶとなんか、ドキドキする。雇い主だからかな?

ところで、藤城様は色んな会社を経営されているらしい。
建築会社やら、クラブやら。
毎日お忙しそう。お体壊さなければいいけど。
もちろん、秘書的な加納様も。
加納様は相変わらずお優しい。ニコニコとお話してくださる。
毎日藤城様と共に同じスケジュールをこなすのだから、心配になる。
一度、心配で、言ったことがある。
「毎日お忙しそうですね。あんまり忙しいとお体壊してしまいます。休養は取れてますか?」と加納様に。
「大丈夫だよ。息抜きはしてるから。心配してくれてるんだ?」
「それはそうですよ!」
「それは僕の心配?それともあいつ?」
とニヤッと聞かれる。
「えっ!…。両方です!」
「ふーん?両方ね。」
と意味深に言われる。
私、どっちの心配してるの?いやいや、両方です!よ?



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