先生。あなたはバカですか?【番外編SS集】〜君は今ここにいる〜
SS1*夢じゃない
「……ん」
カーテンの隙間から零れる日差しに、誘われるように重いまぶたを開ける。
体を起こし、ぼやける視界を擦って辺りを見回せば、薄暗い中に見慣れない部屋。
見慣れないベッド。
大好きな匂いが鼻を掠めて胸がキュウッと音を鳴らす。
この匂いをかぐと、自然と胸が熱くなる。
淡く儚い想いを思い出す。
切なくて悲しい気持ちを思い出す。
だけど、安心する。
ずっとずっと、この匂いに包まれていたくなる。
「……ここどこだっけ?」
額を押さえ、昨日の記憶を呼び起こす。
昨日は確か、色んな事があった。
そう。昨日は教育実習最終日。
生徒達に最後の授業を行った後、最後の挨拶をして。
その後、森田先生と英語科準備室に戻ってケーキとコーヒーをご馳走になった。
いや、正確には食べてない。
慌てて準備室を出たんだ。
何でだっけ?
どこに向かったんだっけ?
誰に会うため走ったんだっけ?
はらりと胸から掛け布団が落ちる。
「……?」
スースーする胸元に視線を落とすと、途端に昨日の出来事が蘇ってきた。
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