先生。あなたはバカですか?【番外編SS集】〜君は今ここにいる〜

「……ったく」



できるだけ傷つけないように…とか、恐る恐る扱ってるこっちが馬鹿みたいだ。



「ほら」


「え?」



スーツのジャケットに入っていたカイロを差し出すと、キョトンと目を丸くする宮原。


「受験終わったからって油断してるから風邪引くんでしょ。腹とか出して、体冷して寝てんじゃないの?」


「そんな子供じゃありませんよ。しっかり腹巻して寝てるし」


「…ふっは!腹巻してんだ?」



あ…やべ。つい。



思わず吹き出した俺に、宮原は嬉しそうに顔をほころばせる。


つい見とれてしまうほど、幸せそうに───。



「先生、ありがと!カイロ温かい。大事に使うね!」


「あ。」


「さよなら!」



宮原は、パタパタと逃げるように廊下の向こうに消えていった。


やられた。と、俺は頬をおさえる。



どさくさに紛れて頬にキスとか……。



ふらっと、自分のデスクまで戻り、デスクチェアーにドカッと座る。



「はーーぁ…。ちょっとアレは反則……」



そのままデスクに項垂れる。


換気の為に開けた窓から入ってくる風が冷たい。


熱くなった頬に心地いい。
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