先生。あなたはバカですか?【番外編SS集】〜君は今ここにいる〜
「生田さんが幸せなら、俺はそれで幸せ。
だから、幸せにならなきゃダメだよ」
────“よく言うよ。”
心の中でそう呟く。
本当は君が側にいなきゃ、俺は幸せなんかじゃない。
君を幸せにするのは、俺でありたかった。
格好をつけて、君の心に少しでも跡を残せたらって。
みっともない最後の悪足掻き。
どうせこの手を離せば、すぐに君の頭の中はあの男のことでいっぱいになるんだから。
可哀想だとか、申し訳ないだとか、
そんな想いでもいいから。
どうか今だけは、
君の頭の中が、俺の事でいっぱいになればいい。
働かない頭でぼんやりとそんな事を考えながら、君の頬にキスを落とす俺は、
自分の事ばかり考えた、とんでもなくずるい人間だ。
彼女に背を向け、屋上を後にする。
足早に階段を下り、彼女がいる屋上への入口が見えなくなったところで。
「……っ」
ようやく力が抜け、その場に屈み込んだ。
「……きっつ……」
分かってた事なのに、覚悟してた事なのに、ついに手離してしまった彼女を想って、熱いものが込み上げてくる。