先生。あなたはバカですか?【番外編SS集】〜君は今ここにいる〜
この人を失った直後、ただひたすら何も考えないようにと勉強に打ち込んだ彼女も。
この人を想い、食事が喉を通らなくなって痩せた彼女も。
俺の腕の中で、涙を流す彼女も。
少しずつ、前を向く事ができるようになった彼女も。
だけど、一度だって彼女が幸せそうに笑う姿を見た事があっただろうか?
「……川島。俺は、昔からお前の事嫌いじゃないよ」
………え?
弾かれたように顔を上げれば、そこにはどこか憂いを秘めた笑みを浮かべる岩田先生がいて……。
今……この人……。
「あんた……記憶……」
「あいつの事、頼んだからな。
……幸せに、してやってくれ」
────ドクッ。
この人……わざと忘れたふりをしてたのか……?
じゃあ、二人は今も……?
心臓が、ドクドクと早い鼓動を刻む。
なんで?どうして?が交差する思考の中で、俺の頭に強く浮かんだのは、
この事実を知った彼女が、
幸せそうに笑う笑顔で────。
────“川島君て不思議だよね”
そうか。
俺は、
彼女のあの笑顔が、
もう一度見たかったんだ。