先生。あなたはバカですか?【番外編SS集】〜君は今ここにいる〜
私の中の恋愛スキルをありったけ寄せ集めても、どうやったって先生みたいに余裕じゃいられないんだよ。


先生の熱い唇が重なって、震える私の唇を噛み付くように塞いだ。


もう、目を瞑っていたって先生の唇だって分かるくらい、一晩中重ね合っていたはずなのに、ちっとも慣れやしない。


そもそも、こんなの慣れる日がくるんだろうか。


その前に私の体がもたないと思う。


名残惜しそうに離れていく唇。


熱い息が混ざり合う。


まるで狼みたいな瞳に見下ろされ、心臓がドクッと音を立てた。


だけど…


「……っはぁー」


何かを堪えるように眉間にしわを寄せ、溜息と共に崩れるようにのしかかってくる先生の体。


「う"っ…ちょっ、重いですっ」


「ごめんね。余裕なくて」


「……え?」


私の肩に顔を埋める先生は、どこか弱々しい声でそう呟く。


「ちょっと…思い出したわ」


「…何を…ですか?」


「手術が終わってさ、目ぇ覚ました時のこと」


先生が言うのは、先生の頭の中に出来た腫瘍を取り除くための手術のことだろう。


「夢見てたんだよ」


「夢?」


「そう。手術の間、お前の夢」

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