溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
会いたいと思ってくれていたの?
私はそれだけで胸がいっぱいになり、言葉が出てこない。


「こんなところに呼び出してごめんな。今、わけあって自由に動けないんだ」


だから人気のない場所に私を呼び出したの?
でも『わけ』ってなに?

彼はしばらくそのまま私を抱きしめたあと、やっと解放してくれた。


「澪、泣いたの、か?」


目は冷やして腫れを取ってきたはずなのに、彼はすぐに気がついた。
返事をせず視線をさまよわせると「ごめん」と大成さんが頭を下げる。

『ごめん』なんていう言葉を聞きたいわけじゃない。
ただどうして千代子さんと一緒だったのかが知りたいだけ。


「今、アルカンシエルはフランスの老舗ホテルと提携の話が進んでいる」


大成さんは私の目をまっすぐに見つめながら口を開いた。
小さくうなずくと、彼は続ける。

「それに関する資金繰りでいろんな銀行と交渉して、上層部が東横銀行とも接触した。もちろん、ビジネスの一環としてだ。あんなことがあったあとだし、交渉がうまくいかないのは承知の上で。だから俺としては、別の銀行をあたっていたんだ。アルカンシエルを高く評価してくれる銀行はたくさんあるからね。だけど……」
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