溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
彼はそこで言葉を濁す。
うまくいかなかったんだろうか。


「再びアルカンシエルが東横銀行に接触したことで、千代子さんが思い出したように澪のことをいろいろと詮索しだして」

「私?」


私のなにを?
私が驚いていると、彼は唇を噛みしめる。


「澪。お前のことは俺が守る。だから、少しだけ時間をくれないか」

「それはどういう——」

「俺は澪だけが、欲しいんだ」


私の言葉を遮る彼は、複雑な顔をしながらも、少し口角を上げてみせる。


「昨日……千代子さんと一緒だったんですか?」


声が震える。
彼がどれだけ私のことを想ってくれていても、『うん』と言われたら、笑っていられる自信がない。


「昨日東横銀行の関係のパーティがあって、それに出席させられた。東横の頭取は、あの婚約破棄がただの痴話げんかだったと思わせたいらしく、千代子さんと同伴するようにと言ってきた」
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