溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「彼女はとても心のきれいな女性です。つらい過去はあったかもしれない。ですが、それは彼女のせいではないし、その経験が彼女の優しさを作っている。一生愛する価値のある人だ」


大成さんに、会場中のすべての視線が向いている。
私は混乱してどんな顔をしていたらいいのかわからず、ただうつむいていた。


「私も少し前までハウスキーパーをしておりました」


私の腰に手を回したまま唐突にそんな告白をする大成さんに、周りがざわつきだした。


「私はたしかにアルカンシエルの跡取りです。ですが、ハウスキーパーの仕事を経験しなければ、知らないことばかりでした。一円稼ぐのがどれだけ大変なのか。アルカンシエルの品格を保つのに、どんな努力をしているのか。自分の仕事にプライドを持つというのは、どういうことか……」


ハウスキーパーは、決して華やかな仕事ではないかもしれない。
だけど、私は大好きだ。


「私は彼女たちハウスキーパーに大変感謝しています。彼女たちがいなければ、アルカンシエルは成り立たない。我が社にとって大切な人材を侮辱されて、黙っておくわけにはいきません。このような場ではありますが、断固抗議させていただきます」
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