溺甘スイートルーム~ホテル御曹司の独占愛~
「これ、すごくおいしい! アボカド、初めて食べました」

「えっ、初めて?」


興奮気味に話すと、彼は目を丸くする。


「あれ、変ですか?」

「変じゃないさ。澪、いろいろ知らなさそうだな」


そこまで言った彼は、なぜか身を乗り出してきて私の耳に手をかざす。


「俺が初めてをたっぷり教えてやるよ」


そして、どこか悩ましげな声で囁き不敵な笑みを浮かべるので、軽く固まる。


「昨日の澪を見てたら、初めてかなと思って」


昨日の私を見て、なにが初めてだと?
いや、なんとなくわかったから聞かないけど。

私が複雑な顔をしていると、彼は肩を震わせる。


はー、からかわれたんだ。

私はなにも言わずに口を尖らせ、コーヒーを口に運んだ。
余計なことを言うと墓穴を掘りそうだからだ。


「大成さん、今日は出社されるんですか?」


あんなことがあったあとだから、ちょっと心配だ。


「いや。もう俺の席はないだろうし——」

「ダメです」


私は彼の言葉を遮った。
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