日向 HIMUKA
「何でそこにいたの?」

「あの子がわしを呼んだんじゃ」

日向は、そう言って
ミカの部屋があるあたりをあごで指した。

「もしかしてミカ?」

意外な言葉に、ぼくはなんだか腹がたった。

こんなに心配しているぼくに何も言わないで、
日向は自分から呼んでたのか。
それもぼくに内緒で。

すると、ぼくの心を見透かしたように日向が言った。

「無意識にじゃよ」

「無意識だって?どういうこと?」

日向は、長い人差し指をぼくに向けて、
小さな目に真剣な色を浮かべた。
難しい話をする時の表情だ。

「人は常に思いを発している生き物だと前にも言ったろう?
あの子の思いは、ここ最近常にわしに向いとった。
その念を水晶がつかまえたんだ。
ただ、曖昧に助けを求めるような波動は感じるが、
具体的なビジョンは出てこん。
だから無意識だと分かった。
目的が明確なビジョンは、
具体的な映像を作り出すものだからな」

「ふぅん」

やっぱり無視されてんじゃん。

頼りにされない腹立たしさと、
日向の説明をすぐに飲み込めない自分に苛立って、
ぼくは、素っ気なく横を向いた。

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