日向 HIMUKA
「そうふくれるな。
わしに助けを求める以上、悩みの原因は、
おそらくこの世的なものではないのだろう。
お前の手には負えぬと思ってのことじゃろ」

んー、確かにそうかも知れない。

あの時、ぼくはミカの言葉に返事もできなかった。

急に死ぬとか何とか言われても、
どうしてやればいいのかなんて思いもつかなかった。

ぼくは、裏切られた気分をひとまず棚にあげて、
ここ数日のミカの様子と、
さっきのできごとを日向に話した。

だまって聞いていた日向は、

どうも納得できない様子で、首をかしげた。

「妙だな、何に悩まされているかは定かではないが、
さっきあの子が通った時、
それほど邪悪なものは感じなかったがな」

「邪悪なものって?」

「人は、暗い思いを長く持ち続けると、
その辺を彷徨っている悪しきものたち、
つまり、同じ波動をもつ悪霊(あくれい)どもに
憑依(ひょうい)されることが多い。
そして、悪霊に憑依されることによって、
さらに気分が暗くなるということがよくある。
わしの知る限り、悪霊憑依を受けておる者は、
みな一様に暗い目をしておるものじゃが、
ミカを見る限り、
そこまで邪悪な霊波動は感じなかったんだがな」

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