日向 HIMUKA
これには、反論できなかった。

幽霊に足がないというのは、
日本では定説みたいなものだ。

「それに……」

今度は、怯えるように身を縮めてミカが言う。

「その人の向こうにいつも川が見えるの。
あれはきっと三途の川だわ。
テレビの臨死体験なんかでよく言うじゃない。
川を渡ろうとしたときに振り返ったら生き返ったって。
そのうち私もあの川の向こうへ連れて行かれるんだわ」

まるで、今そこにその川が見えているように、
ミカの瞳は宙を彷徨い、
急に寒気に襲われでもしたかのように、
細い肩を、自分の手の平でおさえこんだ。

今やミカは本気で怯えていた。
冗談や、ちゃちゃを入れる雰囲気ではない。

それに少し赤くなってた目が、
わずかにうるんできたような気もする。

かなり、やばい。
女の子に泣かれたら
どうしていいのかわからないじゃないか。

それも、
そんなしおらしい姿が
まるで想像もつかないミカとなったらなおさらだ。

< 28 / 85 >

この作品をシェア

pagetop