日向 HIMUKA
同時に、ぼくを呼ぶ声がきこえて、
はっと顔をあげた。

車の往来の少ないこの道では、
こう寒いと、つい地面ばかり見て歩いてしまう。

そこにいたのは、赤い色がやたらに目立つマフラーをして、
ニコニコと手をふっているミカだった。

いつもは肩までたらしている髪を
頭の上の方でひとつにまとめ、
すっきりとした細い顔には、
印象的な大きな瞳が、いかにも元気に輝いている。

確か今日は、
終業ベルがなるやいなやあわてて帰ってったっけ。

 頬とわずかに鼻のてっぺんにさした赤みと、
幼子のようにすんだ瞳が、
色白のミカの表情を一層際立たせていた。

この坂上ミカこそ、隣人であり、秀才であり、
ぼくがここに引っ越してきてはじめての友だちだ。

だけど、最初の印象は、いたって悪かった。

でしゃばりで、おせっかいでおまけに気が強い。

やたら迫力のある大きくつり上がった目には、
正直うんざりしたもんだった。

それが、転校早々ふってわいたような生霊騒動でさんざん世話になり、
今ではすっかりぼくの理解者になっていた。

ミカは、ほんの数メートル先からぼくにむかって走ってきた。
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