日向 HIMUKA
 ぼくは、
勇気をふりしぼってゆっくりと首を動かした。

瞬間、何かが視界を走った。

白いかたまりのようなものが、
ふわりと宙に舞ったような気がした。

刹那、今度はぼくの首筋に何かが触れた。

「誰だっ!」

ぼくはたまらず声をあげた。

テレビの上の花瓶がさっと視界にとびこむ。

何かあったらそれを武器にしよう。

そう決意して立ち上がった時、

ニャ~

と細い声がした。

え?

「いらっしゃい、プリン」

プ、プリンだって?

見ると、毛もじゃの白いネコが、

ミカのいざの上にふわりと飛び乗って、

ちょこんとおさまった。

「ネ、ネコ?」

「そうよ」

「こいつ、今ぼくの後ろにいなかった?」

「いたわよ。
ソファの背もたれから
ハルキくんにちょっかい出そうとしてたわよ」

プリンと呼ばれた、これまた高そうなネコは、
まるでぼくをあざ笑うかのように、
腹をみせてひっくり返っていた。

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