日向 HIMUKA
 それにしても……やっぱり目が赤い。
それにやけにうるうるしてる。
心なしか顔も妙にむくんでるというか……。

「お前、ひょっとして具合悪いの?」

「少しね」

 ぼくは、ミカの額にそっと手をあてた。
次にとびのいた。

「すごい熱じゃないかっ!」

どうりで目が赤いはずだよ。

「もう来たのかな、死神さん」

「何で今までだまってたんだよ、ったく」

 ぼくは、
ミカの冗談を無視して思わず大声を出していた。
忍耐強いというか、無頓着というか。
でもミカは、やっぱり寂しそうにつぶやいた。

「一人でいるのに慣れちゃってたから」

「待ってろよ」

言うやいなや、
ぼくは玄関を飛び出した。

風邪ぐすり、風邪ぐすりと。
確か冷えピタか何かあったはずだ。

氷まくらは……冷えピタがあればいらないか。

ぼくは、あわただしく薬箱をひっくりかえした。

「ハルキィ、何やってるの?」

やばい、母さんだ。

薬箱をあさるぼくに不審なものを感じたらしい。

あれこれ聞かれたら面倒くさい。

とりあえずいりそうな物だけひっつかんで、
風のようにとびだした。

ぼくがもどると、
ミカは、ソファの片側をつかって横になっていた。

嵐のようにすっとばしてきたぼくを見て、急に噴きだす。

「ベッドで寝ろよ」

そういうぼくに、またおかしそうに笑う。
< 32 / 85 >

この作品をシェア

pagetop