日向 HIMUKA
「何だよ」

 感謝のかけらもないやつだ。

「だって、風邪ぐすりぐらい、うちにもあるもの」

「あ」 

それはそうだ。
救急箱なんて珍しい物でも何でもない。

慌てた自分がひたすら恥ずかしい。

「でもそっちの方がきくかも」

気をつかったミカが、
ぼくの手にしっかりとにぎりしめられている
薬を指差して言った。

「ありがとう、もう大丈夫だから、ほんとに」

その言葉に、少し救われたような気がして、
ぼくは、ちゃんと寝ろよ、
と釘をさして家に帰った。

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