日向 HIMUKA
ぼくの中から
あっという間に恐怖心は消え去り、
次に哀れっぽいその雰囲気に同情心が芽生え、
最後には、
思いつめたミカの表情を思い出して
怒りが噴き出した。
「おい、死神やろう!」
ぼくは、
思いっきりにらみつけながらどなりつけた。
ピエロは、
一瞬びくっと体をふるわせ、
静止した。
うつむき加減だったその顔が、
まっすぐぼくに向き直る。
普通に考えれば、
ぼくの声にびびったんだろうと思う。
でも、
ピエロの顔というのはどこか無表情で気味が悪く、
ぼくの中で、消え去った恐怖心がまた顔を出した。
わきあがりそうな怯えを何とかおさえて、言う。
「誰だ、お前。何でこんなところまで出てくるんだよ」
一瞬の沈黙。
そしてピエロは、蚊のなくような声で言った。
「あ、あなたは、あの子の……」
「ミカの何だよ!」
「と、と、ヒック……」
こういう時、
ぼくは、自分が母さんに似ていると
つくづく実感してしまう。
つまり、
ハッキリしないやつには、
どうにもイライラしてしまうんだ。
あっという間に恐怖心は消え去り、
次に哀れっぽいその雰囲気に同情心が芽生え、
最後には、
思いつめたミカの表情を思い出して
怒りが噴き出した。
「おい、死神やろう!」
ぼくは、
思いっきりにらみつけながらどなりつけた。
ピエロは、
一瞬びくっと体をふるわせ、
静止した。
うつむき加減だったその顔が、
まっすぐぼくに向き直る。
普通に考えれば、
ぼくの声にびびったんだろうと思う。
でも、
ピエロの顔というのはどこか無表情で気味が悪く、
ぼくの中で、消え去った恐怖心がまた顔を出した。
わきあがりそうな怯えを何とかおさえて、言う。
「誰だ、お前。何でこんなところまで出てくるんだよ」
一瞬の沈黙。
そしてピエロは、蚊のなくような声で言った。
「あ、あなたは、あの子の……」
「ミカの何だよ!」
「と、と、ヒック……」
こういう時、
ぼくは、自分が母さんに似ていると
つくづく実感してしまう。
つまり、
ハッキリしないやつには、
どうにもイライラしてしまうんだ。