日向 HIMUKA
「大丈夫?くしゃみなんかして」

「あ?うん」

「今帰り?」

「うん」

「うんばっかり」

ミカが声をたてて笑った。
その様子に、正直ぼくは驚いた。
だってここ数日間ミカの様子がおかしかったことが、
少し気になってたんだ。

なんか顔色も悪くて、
いつもは機関銃みたいにしゃべるやつが妙に無口だったりして。
嵐の前の静けさを思わせるそんな姿は、不気味ですらあった。

でも今のミカは、以前のミカだ。
明るくて元気で、時と場合によっては
うるさいぐらいおせっかいに目を輝かせていた
あのミカの顔だ。

気のせいだったんだな、きっと。

ぼくがほっと一息ついたとき、
ミカは、急にぼくの手をひいて今来た道を戻りはじめた。
つまり今までぼくが向かっていた方向へ。

ミカにつられて足を早めたぼくは、
スーツを着た厳格そうなおじさんと、
高そうな服に派手な化粧をしたおばさんの前にいきなり立たされた。

ミカの両親だ。

「こ、こんにちは」

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