日向 HIMUKA
ぼくは、急いで頭を整理しようと努めた。

病気や事故で意識を失ったりしたとき、
死んだ人が出てきておいでおいでをする……聞いたことはある。

夏になるとよくテレビなんかでよくやっている。
でもミカの場合、舞台は夢の中だ。
それに何より、
ミカはどこから見ても健康そのもので、
あの世の迎えが来るとは考えにくい。

それにミカはその人を怖がってるけど、
ぼくの印象じゃ、どうもそんな感じはしない。
少なくとも、悪い人には見えない、というか、
悪い幽霊には見えない。

しかし、何でピエロのマスクなんだろう。

日向もそこまでは分からないらしい。
そして決め手はあのひと言。

(あの子が呼んだ)

「でも、どこの誰がミカに取り憑いてるんだろう。
やっぱり、先祖とか、その辺の浮遊霊か地縛霊の類かな」

「怨恨霊というのもあるぞ」

 日向がすました顔で恐ろしいことを言う。

「ジョ、ジョーダンだろ?」

「当たり前だ。

憑依霊というのは、
同通する心をもつものに取り憑くもんだ。
ミカの波動がそんなものを引き寄せるはずがなかろうが」

だったら妙なこと言うなよ。

「ともかく、
夢の中をのぞかせてもらわんことには何とも言えんな」

「でもどうやって?」

「わしを誰だと思っとるんだ?」

急に胸をそらした日向の前で、
水晶が、得意げ(?)に輝く光を放っていた。
< 49 / 85 >

この作品をシェア

pagetop