日向 HIMUKA
ぼくは、もごもごとぎこちないながらも、
とりあえず挨拶をした。

おじさんは、表情をあまり変えずに、
こんにちは、とひと言だけ言い、
おばさんは、少し笑顔を見せながら、同じ言葉を返してくれた。

おじさんは、出張が多くて、おばさんの方は、
いつも帰りが遅いとかで、普段はあまり顔をあわせることがない。

たまに見かけてもいつも忙しそうで、
会話なんてする余裕もなく、
軽い会釈だけで終わっていた。

だから正直どきどきした。

それに、どきどきの理由は実はそれだけじゃなくて、
ぼくは、この二人がなぜか苦手だった。

なんだか近寄りにくそうで、怖そうで……。

一瞬鼻をかすめる香水の臭いが、
二人をさらにぼくとは違う別世界の人間に仕立てあげている。

ミカにはそんなこと言ったことはないけれど。

でも、おばさんは、ミカに似てやはり美人だった。

特に、だまってても圧倒されるような
印象的すぎる大きな瞳が。

「ハルキくん……だったかしら?」

きらきらした目が、少しだけ親しげに細くなる。

「はい」

「ミカと仲良くしてくれてるのね」

「はぁ」
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