日向 HIMUKA
「それはあなたが持っていてください」

この前きいたときとは別人みたいに、
しっかりとした口調でピエロは言った。

「これ、何なんだよ。それに、あんた何者だ?」

振り返らないままにぼくが言うと、
ピエロは、
かすかにふっと笑うような音をたてて静かに言った。

「そのうち分かりますよ」

「ちゃんと説明し……」

ぼくが問い詰めようと振り返ったとき、

「遅いぞっ!薬はまだかっ」

とどなる日向の声が聞こえ、
ピエロ男の気配は、
あっという間にかき消えた。

ぼくはあわててマスクをポケットに突っ込み、
日向たちのところへ向かった。

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