日向 HIMUKA
そういえば、
夢から出ていけって言われたとか言って
泣いてたな。

ぼくは、あの気の弱そうな幽霊が、
少し気の毒になった。

だが、あの幽霊は、
よほどミカに執着しているらしく、
かなり間をおいて、
ぼんやりと現われはじめた。
「来たぞ」

日向の声から、
緊張が伝わってくる。

まず白い光の中に、
草原を思わせる緑の空間が出現した。

その向こうに、
ミカが言っていたような川らしきものが見える。

その手前に、
ぼんやりと人影らしきものが揺らめきだした。

大きな揺れはやがて静まり、
はっきりと、その形をとった。
ただ、やはり足は、
ゆらゆらと半透明に揺れたままだった。

「あいつだ」
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