日向 HIMUKA
「娘が何を求めているのか、
その大きな瞳には何も映っていないようじゃな」

ぼくが知っている限り、
今おばさんに向けられている日向の目は、
見たことがないほど冷たかった。

そして、
その無遠慮な態度におばさんがわなわなとふるえ、
腰を浮かせて立ちあがろうとした瞬間、
ぼくは信じられないものを見た。

水晶の中から、
目もくらむような強い光があふれ出し、
部屋の中は、一瞬光で何も見えなくなった。

その強烈な光に、
思わず瞼をとじ、次に目を開けた瞬間、
光の中からまるで押し出されるように、
あのピエロが目の前に現れたんだ。

ついさっき、ぼくのそばに現われ、
そして、今ミカの夢に現れたその人が、
はっきりと形をとってその場に立っていた。

手をのばせば触れられるほどのその場所に。

その時、
ずっとミカの横でまるまっていたプリンが
ふいに立ちあがり、
その横に歩み寄った。
ごろごろと喉を鳴らし、
何度もまばたきしては、
親愛の気持ちを示しているように見える。

突然姿を見せた幽霊は、
すくみあがるおばさんを見てふっと笑顔になった。
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