日向 HIMUKA
「私だって忙しいのよ。
マンションのローンも払わなくちゃならないし。
働かなければしょうがないのよ。
それのどこが悪いっていうの?」

マンションのローン。
それはぼくの母さんも言っていた。
げんにここに来てから母さんも働き出した。

結果は、やっぱり同じ。

母さんもぼくに目をむけなくなったっけ。
何か言うと、忙しい、忙しい。
でも……とぼくは思う。
共働きが悪いなんて思わない。
忙しい親を恨む気持ちもない。
あの頃ぼくが求めていたものは、
もっと違う次元のことなんだ。

母さんは、今も働いている。
何か言うと忙しいっていう口癖も変わらない。

でも、今のぼくは、
前のように寂しくはない。
それは、
母さんが、一緒にいられる短い時間の中で、
ぼくを理解しようとしてくれるようになったからかも知れない。
うまくは言えないけど、
仕事と愛情って、
両立しないものじゃないような気がするんだ。

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