日向 HIMUKA
あの日、眠りに入ってから、
急にピエロの姿が目の前からかき消えて、
それっきり出てこなくなったらしい。

まさかの後水晶からとびだして、
あれこれ語り合ったなんて
夢にも思ってないらしい。

その様子から、
おばさんは、何も話していないんだと分かった。

あのマスクは、
いつか、ずれた絆が本当に修復された時に、
形見としてもらえるのかも知れ
ない。

いつも見守っている
おじいちゃんの愛情と一緒に。

それまでは、
きっとどこかで静かに出番を待っているんだろうな。

「日向にお礼も言えなかったな」

そう言って、
ミカは、急に改まってぼくを見た。

「ねぇ、あのあと一体何があったの?
目がさめたらママがいて雑炊なんかつくってるし、
日向とハルキくんはいないし、わけわかんないよ」

「いいじゃん。そんなことどうだって」

なおも何か言いたそうなミカの視線を無視して、
ぼくはまた、
今は誰もいない日向の定位置に目をやった。

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