降りやまない雪は、君の心に似てる。


溢れてしまいそうな涙を隠すように私は席をたつ。

手を洗いにいくふりをして、スマホでオーロラのことを調べた。

やっぱりその発生条件は厳しくて、今年の冬に北海道で見られるという情報はどこにもなかった。


「はあ……」と大きく息をはいて、気持ちをネガティブなほうに持っていかれないようにした。平然を装いながらお手洗いから戻ると、俚斗の手にはなぜかソフトクリームがあった。


「おかえり」

俚斗はそう言って私にアイスを渡す。


「さっきメニュー見てたとき、食べたそうにしてたでしょ?」

たしかにカレーうどんよりも牛乳ソフトクリームに釘付けになったのは事実だ。本当に俚斗はよく見ている。その洞察力でいつか私の心まで読まれてしまいそう。


「いらなかった?」

「ううん、ありがとう」

ひと口食べると牛乳の味がふわりと広がった。さっきまで落ち込んでいたのに俚斗は明るい雰囲気にするのがすごくうまい。

そうやって、周りに気を遣いながら生きてきたのかもしれない。

だから、相手がこう思ってるだろうとか、こう望んでるだろうとか、そういうのをいち早く察知できてしまうに違いない。

そんなことをぼんやりと考えていると……。


「小枝、鼻にソフトクリーム付いてる」

また嘘だろうと自分の鼻を確認したら指先にアイスが付いていて、顔がカーッと赤くなった。


「可愛い」

クスリと、俚斗が目を細める。

俚斗の言葉は本当にストレートすぎて、どう対処したらいいのか分からない。

私から目線をはずそうとしないまっすぐすぎる瞳とか、その反応を見て楽しんでいるような口元とか。とにかく心臓がバカになるのでやめてほしい。
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