降りやまない雪は、君の心に似てる。
べつに急がなくても明日も会える。今日は一緒にご飯を食べにいったし、雪だるまも作ったし、ライトアップも見れた。その楽しかった気持ちを損ねたくない。
「ううん。なんでも……ない」
私がそう言ったあとにバスはゆっくりと停車して、俚斗が「じゃあね」とドアの向こう側へ降りていく。
俚斗がいなくなった車内で、私は「はあ……」と肩を落とす。深くため息をはいたせいか窓の曇りがいつもより濃い気がして、指でキュッキュッと窓を拭いた。
……私の意気地なし。
またため息が出そうになったところで、コンコンと奇妙な音がして顔を上げると、窓の外には俚斗の姿。
慌てて前のめりになって確認すると、やっぱりそれは見間違いなんかじゃなくて、俚斗が寒空の下で立っていた。
バスの座席が高くなっているから、いつも見上げなければいけない俚斗の顔を私は見下ろしている。
それでも背の高い俚斗はニコリと笑って、曇っている窓になにかを書いた。まるで魔法のように流れる指先。
【また明日】
それを見た瞬間、ズキンと胸が熱くなる。
離れがたそうに俚斗は指を窓から離さなくて、私も同じように指を重ねてみる。
人差し指、中指、薬指と順番に手を広げていって、気づけば私たちは自然と手のひらを合わせていた。
俚斗の手は私よりひとつぶん関節が長くて、指の形や骨組みが全然違う。
ゴツゴツしているけれどすごく綺麗で、ひんやりとしているのが窓なのか、それとも俚斗から伝わってくる体温なのかは分からない。