降りやまない雪は、君の心に似てる。



「ハア……ハア……ッ。小枝、早く入って」

私は俚斗に急かされるように建物の中に入る。

髪の毛はお風呂にでも入ったかのようにびしょ濡れ。走っている最中に雪がみぞれに変わったからだ。

ぽたぽたと水滴が足元に溜まっていて、寒さで身体が震える。


「大丈夫?」

俚斗の濡れ髪を見て、不意打ちにもドキッとしてしまった。


「わ、私は平気だけど、俚斗こそ平気?」

俚斗は途中でコートを脱いで、それを私の頭へと被せてくれた。『いいよ』と突き返したけれど、オウム返しのように同じ言葉を返されて俚斗は極寒の中トレーナーだけで走っていた。

寒さを感じないって言ってたけど、私は心配で仕方がなかった。


「ちょっと待ってて」

俚斗は靴を脱いで床を歩く。


初めての場所なのに、この空間の匂いには覚えがあった。それは、学校の体育館の匂い。

俚斗は慣れた手つきで体育倉庫から赤外線ヒーターを持ってきて、壁に取り付けてあるコンセントにコードを差し込んだ。

そしてスイッチを入れると、暗闇にオレンジ色の明かりが灯って、すぐに暖かさが伝わってきた。


「ていうか、勝手に入って怒られない?」

多分、ここは小学校。

走ってる時は夢中で気づかなかったけど、体育館には校章や校歌が飾ってあって、バスケットゴールの高さは当たり前だけど私の高校よりも低い。


「ここの体育館って南京錠で施錠してあるんだけど、コツさえあればすぐに開くんだよね」

ちょっと俚斗が悪い顔をしている。


「不法侵入じゃん」

「うん、そう。だから俺たちだけの秘密」
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